Story7(最終回):「おみせやさんごっこ」から広がる未来へ
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第6回目では、ついにOMEP(世界幼児教育・保育機構)ボローニャ大会の開催地であるイタリアに到着し、発表前から発表後までの様子をお伝えしました。現地のリアルな写真とともに、イタリアの空気を感じながらぜひご覧ください!
▼第6回目はこちら
https://global.lemonkai.or.jp/news/news-760/
第7回目は、「これまでの振り返りとこれから」をテーマにお伝えします。
この連載では、幼児期の金融教育プログラムが、どのような思いから生まれ、現場で実践され、そして世界へと届けられていったのかをお伝えしてきました。
最終回となる今回は、その歩みを振り返りながら、この取り組みがもつ意味と、これからの展望についてまとめたいと思います。
この記事を書いた人
社会福祉法人檸檬会 副理事長:青木 一永
国家公務員として勤務の後、檸檬会に入職し園長職を経て現職。副理事長として全国の施設運営や職員育成を行うほか、大学非常勤講師も務め、理論と実践の架け橋を目指している。博士(教育学)。
第7回: 幼児期の金融教育がひらく未来──振り返りと、これから
違和感から始まった問い
このプロジェクトの出発点は、「幼児期の金融教育ってどういうことだろう?」という問いでした。
金融教育は、小学校以降、あるいは大人になってから行うもの、というイメージが強いかもしれません。しかし子どもたちは、日常の中ですでに買い物や身の周りにある仕事、ごっこ遊びを通して、お金に関わる社会に触れています。 だからこそ私たちは、幼児期の発達特性を大切にした金融教育をつくりたいと考えました。
大切にしてきたのは「教える教育にしない」こと
このプログラム開発および実践で大切にしてきたのは、知識を教え込むことではありません。
問いを投げかけ、対話し、学びが立ち上がること。
1円玉1000枚と千円札を前に悩む姿。
「お金がなくなったらどうなる?」と真剣に考える表情。
おみせやさんごっこを通して社会の仕組みに触れる姿。
こうした姿は、子どもの内側から「やりたい!」「何だろう?」が湧き出てくる内発的動機づけを大切にしたデザインの結果として、生まれてきたように思います。
広がっていく学び
この取り組みは、子どもたちだけでなく、保育者、そして家庭へと広がっていきました。
子どもとお金について考えることを通して、保育者自身もお金について考える姿がありました。 保護者の方からも、「仕事について話すきっかけになった」「子どもがお金の話をするようになった」といった声も聞かれました。
学びが子どもだけではなく、さまざまな方面に広がっていく様子を通して、私たちはこの実践が、個別のプログラムにとどまらない価値をもっていると感じています。
SDGs・ESDの視点から見えてきた意味
SDGsの実現につながる教育は、ESD(持続可能な開発のための教育)と呼ばれています。
ESDやSDGsというと、環境保全の活動を思い浮かべがちですが、そこには社会・文化、そして経済の視点も含まれています。
まさに幼児期の金融教育は、経済の視点によるSDGsやESDへとつながる実践です。
子どもたちは、このおみせやさんごっこの中で、循環性や有限性、交換、感謝、そして「誰かの役に立つ」ことに触れ、持続可能な社会の創り手として育っていくと、私たちは信じています。
今回、世界各国から乳幼児教育の研究者が集まるOMEPボローニャ大会(イタリア)で発表できたことに加えて、大阪・関西万博においても、この「おみせやさんごっこ」の発表機会をいただきました。
こうした発表や交流を通して、国や文化が異なっても、「子どもをまんなかに置く」という姿勢の大切さを強く実感しました。
また、幼児期の「金融教育」というテーマが、国際的にも十分に語る価値のある実践であることを、あらためて確信しました。
ただ、このプログラムは、これで完成したわけではありません。
保育実践を重ねる中での工夫やそこで見えてくる子どもたちの姿とともに、これからも育っていくものだと思っています。
幼児期の金融教育が、特別な取り組みではなく、保育の中に自然に息づくものになること。
そして子どもたちが、「考えることは楽しい」「社会っておもしろい」と感じながら育っていってほしいと、心から願っています。
ここまで連載をお読みいただき、本当にありがとうございました。