Story6:「おみせやさんごっこ」から広がる未来へ
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第5回目では、OMEP(世界幼児教育・保育機構)ボローニャ大会で幼児期の金融教育プログラムの発表に挑戦することを決めた背景や、英語で発表準備をする様子をお届けしました。
▼第5回目の記事はこちら
https://global.lemonkai.or.jp/news/news-716/
第6回目は、ついにOMEPボローニャ大会の開催地であるイタリアへ到着し、発表前から発表後までをどのように過ごしたかについてお伝えします。
20時間を超えるフライトを経て、ようやくボローニャに到着したとき、体は正直ぐったりでした。
でも、ボローニャの街は、まるで中世の絵画から抜け出してきたような赤茶色の街並み、アーチの連なる回廊、石畳の道、そしてカフェから漂うエスプレッソの香りに満ちていました。
「ああ、ボローニャだ」と思わず感嘆! イタリアの空気を感じる写真とともに、ぜひ記事をお楽しみください。
この記事を書いた人
国家公務員として勤務の後、檸檬会に入職し園長職を経て現職。副理事長として全国の施設運営や職員育成を行うほか、大学非常勤講師も務め、理論と実践の架け橋を目指している。博士(教育学)。
第6回:ボローニャで見た世界──イタリアで感じた“保育の共通言語”
1.ボローニャの朝に走る
マラソンが趣味の私にとって、旅先での朝ランは最高のご褒美。翌朝、まだ街が眠っている時間に走り出すと、観光客はほとんどおらず、まるで街を独り占めしたような気分でした。
20時間のフライトの疲れも、ボローニャの朝の空気がすっかり吹き飛ばしてくれた気がします。
大会前には、ボローニャから約200キロほど離れたモンテッソーリの生家も訪れました。
「ここが、あのモンテッソーリが生まれた家か」と思うと胸が熱くなりました。幼児教育の概念を大きく変えた彼女の存在を前に、一人の保育者として深い感慨に包まれました。
2.発表直前―情熱と冷房と
OMEP世界大会の開会式は、さすがイタリア。
主催者の先生(研究者)が、情熱的に歌い上げ、まるでコンサートのような幕開けに圧倒されました(あの声量と上手さはきっとプロです)。
現地の保育施設の見学も行われました。
国は違っても、子どもと向き合うまなざしはあたたかく、同志のようなつながりを感じました。
見学の際、各国の研究者同士の対話の中で、「保育者の給与が他職種と比べて高くない」という課題が話題になり、これは世界共通のテーマだと改めて実感しました。
そして発表の前日、まさかの体調不良。
ホテルの冷房が強すぎたのか、体がとても重い…
「よりによって前日に!」と焦りながらも、ピザやパスタを食べる気になれず(体調不良のときに食べるイタリア料理が全く思い浮かばず)、 スーパーで買った果物や栄養ドリンクを流し込み、12時間眠ることに!
普段ほとんど体調を崩すことがないだけに、自分でも驚きました。まさに“鬼の霍乱”でした。
3.当日。緊張と安堵と、そして一歩前へ
発表当日の朝。
目を覚ますと体はすっかり快調!しかし、初めての英語での発表、緊張しないわけがありません。
発表時間が始まってしばらくすると、腕にはめたスマートウォッチがブルブルし始めました。
「何が起こった?」と確認すると、なんと「異常心拍アラート」の表示が。
どうやら、それほどぼくの心臓はバクバクしていたようです。
それでも、会場の皆さんが頷きながら真剣に発表を聞いてくださっている姿が見えて、少しずつ落ち着いていきました。
質疑応答でもありがたいことに質問を受け、なんとか英語で答えることができました。
用意していた想定質問とはまったく別の質問でしたが、 座長の研究者からも、「タブー視されがちなお金の教育を、遊びの中でどう取り入れたのかがとても興味深かったです」とコメントをいただき、何とか無事に発表時間を終えたのです。
4.挑戦の先に見えたもの
今回の発表は、ぼく自身にとっても、檸檬会にとっても、そして幼児期の金融教育にとっても大きな一歩になったように思います。
英語の壁を越えた先にあったのは、「子どもの学びをどう支えるか」という普遍的な問いを共有する、世界中の仲間たち・研究者たちの姿でした。
国が違っても、文化が違っても、 “子どもをまんなかに置く”という想いは共通している。
そのことを、ボローニャの空の下で実感できたことが、何よりの収穫だったのかもしれません。
次回は、本連載の最終回。
OMEP登壇を終えて、これからの幼児期の金融教育についてお伝えします。