Story2:「おみせやさんごっこ」から広がる未来へ

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<前回のあらすじ>

「金融教育との出会い・導入の決断 ー なぜ保育という場に取り入れようと決めたのか ー 檸檬会としてのチャレンジ精神・未来への想い ー」では、副理事長の青木とFPパートナーさんとの出会いを紹介しました。

▼第1回目の記事はこちら
https://global.lemonkai.or.jp/news/news-373/


第2回目は、プログラムの開発ストーリーです。

「子どもたちに直接関わりたい」「園に訪問したい」。
そんな想いをもってFPパートナーの方々が、「幼児期の金融教育プログラムをつくれないだろうか」と檸檬会を訪ねてくださったのは3年前。私たちがまず大切にしたのは、単発で終わらない、継続的な学びの場をつくることでした。


この記事を書いた人

社会福祉法人檸檬会 副理事長:青木 一永

国家公務員として勤務の後、檸檬会に入職し園長職を経て現職。副理事長として全国の施設運営や職員育成を行うほか、大学非常勤講師も務め、理論と実践の架け橋を目指している。博士(教育学)。



第2回:幼児期だからこそ届けたい、金融教育プログラム設計とガイドラインづく


幼児期の学びは、知識の詰め込みや一度きりのイベントではありません。 遊びの中で、さらには継続して関わる中で、子ども自身が感じ、考え、試してみることによって学びにつながっていく。私たちが目指したのは、まさにそのようなプログラムでした。

単発ではなく継続するプログラムを目指すということは、FPパートナーのみなさんに「何度も園を訪問いただくことになってしまうのでは」という懸念もありましたが、率直に私たちの思いを伝えたところ、快くご賛同いただきました。

こうして、FPパートナーさんに所属するファイナンシャルプランナーが「お金博士」として、保育者と子どもたちといっしょに取り組むプログラムづくりが始まりました。

「教える」より、「感じて、考えて、つながる」経験を

「金融教育」と聞くと、小学生以上を対象とした“教科学習”を思い浮かべるかもしれません。しかし、私たちが向き合っているのは、就学前の子どもたちです。
この時期の学びは、知識のインプットではなく、実体験を通じた心の動きや気づきが何よりも大切だと私たちは考えました。

この考えの背景には、檸檬会がこれまで実践してきた<つながる保育®>があります。
子どもの興味・関心が起点となり、探究心と学びが深まり、広がっていくプロジェクト型の保育。この金融教育も、単なる「教える場」ではなく、子どもたちがワクワクしながら探究を深めていく“お金のプロジェクト”にできるのではないかと考えたのです。

「問い」が子どもと学びを動かす

子どもの学びを動かすのは、興味・関心という内発的動機と、それを生むための保育者による環境づくりが大切です。そこに大きな影響力を持つ「問い」が加わることで、子どもたちの探究が始まり、学びが動き出していきます。

これはまさに、<つながる保育®>が大切にしてきたアプローチです。
私たちは、こうした視点を自然なかたちを盛り込んだガイドラインをつくることで、金融教育の取り組みをより多くの園へ届け、保育の可能性そのものを広げていきたいと考えました。

実際にこんなことをしています

このプログラムでは、以下のような工夫を取り入れています。

  • 1円玉1,000枚と千円札1枚を並べて「どっちがたくさん?」「どっちがほしい?」と考える。
  • ドルやペソ、元など、世界のお金に触れ、円以外のお金があるという驚きに出会う。
  • 昔のお金だった「お米」や「塩」を見て、「お金ってなんだろう?」と想像をめぐらせる。
  • 自分たちのクラスのお金の呼び方を考えて、そのお金を実際につくってみる。

子どもたちは、こうした活動の中で自然と「価値」や「お金の役割」に触れていきます。その活動すべてが、“金融リテラシーの第一歩”となっていくのです。


ガイドラインは「気づきの地図」に

このプログラムでは、保育者向けと「お金博士」向けの2種類のガイドラインを用意しました。
どのような環境を整えるか、どのような「問い」を投げかけるか、どんな見通しを持つのかといった視点を示すことで、全国どこでも活用できるプログラムになるのではないかと考えたからです。

そこには、

  • 子どもの興味・関心の芽生えをどのように生むか
  • それらをどのように展開していくか
  • どのような環境を整えるのか
  • どのような問いを投げかけるか

こうした視点を大切にしながら、保育の中で自然に活用できる「やわらかな道しるべ」を目指しました。また、このプログラムやガイドラインを通して、実践した保育者の中からこんな気づきが生まれることも期待しています。

  • 「問いかけ一つで、こんなに子どもが変わるんだ」
  • 「プロジェクトってこういうことか」
  • 「子どもと一緒に創ると、こんなにも面白いんだ」

未来につながる、やさしい金融教育

子どもたちの「なんで?」「どうして?」に寄り添いながら、自分で考え、選ぶ力を育んでいく。
金融教育は、そんな未来への一歩をそっと支える存在になれるはずです。

次回は、実際にプログラムを実践した現場の様子や、子どもたちの変化をご紹介します。どうぞお楽しみに。

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